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ねこばなし 3
Episode191 指先


みやびの鼻先に人差し指の先を近づける……首をのばして鼻をヒクヒクさせ、指の臭いをかぎ始める。
もう少し指先を突き出す……首が後ろにひいていって、しまいにのけぞるような格好になる。
イッパイアッテナの鼻先に人差し指の先を近づける……首をのばしてクンクンと指の臭いをかぐ……そのままぐうっと首をのばしてきて、顎の下を掻け、と要求する。
あのー、その為に指先を出した訳じゃないんですけどー、とか思いながら指を曲げて喉のあたりを掻いてやる。めいっぱい首をのばしたまま、目を閉じて気持ちよさそうにゴロゴロいっている様子はなんとなく映画ネヴァーエンディングストーリーのファルコンに似ている(ような気がする)。
Episode219 かみつくと猫
ある夜――
硝の家の前に段ボール箱が捨ててあった。捨てるのにお金がかかるようなものを不法投棄されたかと中をのぞいてみると……
入っていたのは仔猫3匹。
硝は近所の野良猫達にエサやってるからなー、それを知ってる誰かが、この人ならと思ってわざわざ硝んちを狙って捨てていったらしい。(ひどいことをする)
その捨てられた仔猫の1匹が真っ黒で、一目見たかみつくが「両親を説得してうちで飼う」と云い出した。名前も一瞬で決まった。その名は『加藤三郎』。白い首輪をして矢印型のアクセサリーをぶらさげさせたい、というかみつくの科白を聞いて、「ははーん」と思った方はヤマトフリークの風日の旦那とお友達になれるかも。

そしてしばらく硝んちで育ててね、ってことになった……んだけど、かみつくんちって足の悪いおばあさんがいてねー、ちっちゃいのが足下ウロウロしたら危ない、と結局まだ加藤三郎君は硝の家にいる。そして、こないだかみつくから以下のようなメールが届いた。
加藤君はとってもとっても、甘えたがりのかまってもらいたがりになってしまいました。
「お前は、お前は、攻撃隊隊長なんだぞ〜」と言いつつ、かまってます。
しかも加藤君は、全力を挙げてかまう事を要求します。
右手でかまってると、わざわざ左手のある位置まで体をずらしてきて「こっちの手もかまえ」と要求なさいます。両手使ってかまってると今度は、足元に擦り寄って「足でもかまえ」と要求なさいます。
こーなると、気分はほとんどヨガか体操です。両手両足つかって、加藤君をかまいます。
最近、加藤君は正式名を『加藤三郎かまえもん』と改めました。
かみつくは硝のうちに住みついているという噂もある。一体何をやってるんだか。
Episode222 肩凝りの元
寒い時期、風日がイッパイアッテナにむかって発する言葉のベスト3は「どいて」「重い」「うるさい。
「うるさい」は1年を通して云っているけれど、あとのふたつは冬場に口にする事が多い。暑いとさすがにそんなに長く膝の上にいる事も、寝ている風日の体の上で寝る事もないのだけれど、ちょっと寒くなるともうべったりなのだ。朝ご飯を食べている最中にイッパイアッテナが膝に乗ってくると『今日は寒いんだな』と思う。温度計みたいな奴。
普通に食卓についていると膝のすぐそばにテーブルがあるので、乗りにくい。で、鳴く。風日が後ろにずれるまで鳴いているので「うるさい」と云いいながらも、さがって膝に乗せてやる。でも正座をしていると面積が狭くて乗りにくいのでイッパイアッテナが前足で『ひろがれ〜』という風に風日の太股の間を掘る。仕方がないので胡座をかく。かくして食卓までが異様に遠い不自然な格好で朝ご飯を食べるハメになる。

膝の上で寝ている猫はかわいい。『しあわせ〜っ!』という顔を見ているとへにょへにょになってしまう。
が、ご飯を食べ終わったら歯を磨いて食器を洗わなければいけない。文句を云われながらも(本当にうるさい奴なのだ)「どいてー」と云って、ぐにゃっと寝ていたイッパイアッテナをおろす。
食器洗いやら洗濯やらなんやらが終わって、パソコンに向かう。起動が終了しないうちにイッパイアッテナが膝の上に滑り込んでくる。この時ももっと後ろに寄れだの、胡座をかけだのと要求する。また「うるさい」と云う。
イッパイアッテナは重い。洋猫の雄というのは大抵かなり大きくなるみたいだけど、最近中年太りしだしたみたい。こないだ動物病院ではかったら体重が5.22sもあった。こんなのを膝に乗せていると痺れてくる。で、「重い〜、どいて〜」となる。文句を云いつつ一旦は降りるイッパイアッテナ。でも気がつくと膝の上。昼寝している時も風日に寄りかかってたり、モロ体の上に乗っかってたり。あんまり風日べったりなので旦那に「体の一部みたいやな」と云われてしまった程くっついている。
猫が乗ってる時って、重い、ってのを考えにいれなくても、やっぱり気を遣ってなるべく動かないようにしたりするんだよね。体がかたまっちゃう。冬場、風日の肩凝りがひどくなる原因のひとつはイッパイアッテナにあると思う。
Episode225 ガブリエル――硝んちの猫's

硝のうちには玄関先に段ボール入りで置き去りにされていた3匹の猫がいる。
その中の1匹、茶トラのちゃー君は大食らい。しょっちゅう、しょっちゅう「ごはん出せー!」とそれはうるさいそうだ。しかも食べたくなると人の足や手をガブリとやる。硝によると
「それがまさにガブリ、で、痛いのなんの。メシが出てくるまで執拗に追いかけて来て、ガブリ。他の2匹より1.5倍は食ってる。なのに加藤よりもちっこい。かみつくさん曰く『恐ろしく燃費の悪い猫』なのだー」
この話を聞いて風日は《動物のお医者さん》というマンガに出てくるガブリエルという猫を思い出した。
ガブリエルといえば聖母マリアにイエスの受胎を知らせた天使の名前なんだけど、その猫の場合は『ガブリ、ガブリと人を噛むからガブリエル』というのが由来だそうで、ちゃー君、改名しちゃったら? などと思ったんだけど、実はその昔硝が書いフィクションにティップという名の、チビのクセにやたらめったら食べまくる男の子が出てきて、硝はちゃー君改めティップにしようかと思案しているとか。
Episode226 プチ家出の成果?――硝んちの猫's

ちゃー君が2日ほどプチ家出をした。さぞかしお腹をすかせているだろうと思ってご飯を作ってあげたのに、見向きもせずに加藤君と遊んでいたそうな。
かみつく「それってさー。ご町内のご飯所(いわゆる別宅というヤツですね)、開拓に行っとったんちゃうん?」
硝 「グルメ食べ歩きの旅2日間やったんか〜!」
しかし、なぜか左のヒゲが数本短く切られていたとか。どこで何をされたんだろうね?
Episode228 長い名前――硝んちの猫's

かみつくが久しぶりに加藤君に会ったら「お前何があったん?」と、問いただしたくなるほどでっかく……いや、デブになっていたそうだ。
黒いから見た目以上に重く感じるのかもしれないとはいえ、抱き上げたら肉の感触がずしっ。
かみつくは猫を抱いているというよりは、重く作ってあるテディベアのぬいぐるみを抱いているようだと思ったんだって。そんでもって、その『見た目より重い。ずしっとした触感。うずくまった形』がある物に似ていることから、加藤君に新しい名前をつけてしまった。
「加藤テンピュール(の腰枕)三郎かまえもん」
どんどん名前が長くなる加藤君でした。
かよりんにその話をしたら
「もっとおっきくして、ロデムて改名したらえーやん」
と言われたそうだけど。
ロ、ロデムですか〜? あんな大きいもんがいたら、家が狭くなるじゃないのよ〜。と唸ったかみつくでした。
注)ロデムというのは「バビル2世」に出てくる変身生物。いろんな姿になれるんだけど、普段は黒ヒョウの格好をしています。
Episode232 知能犯? ――硝んちの猫's

雨あがりのある日――。
外から帰ったしいちゃん(硝んちの猫)が、濡れた足を丹念に丹念に、指の間まで綺麗に舐めていた。
「しいは綺麗好きやなあ」
と感心しているところへ加藤が戻って、濡れ足のまま「かまえ」と硝に寄って来た。
「加藤。しいねーちゃんを見習えや。足拭かんかい」
と硝が云ったら……
いきなり加藤が硝のスカートに前足をかけて、上から下にさあーッと伸びをした。黒のロングスカートに、加藤の濡れ足の跡がベタァ〜。
「加藤ぉぉぉー! スカートで手ぇ拭くなーッ!」
と叫んだ硝。
その話を聞いて「加藤って案外知能犯〜っ! いやー、笑わせてもらったわ」とメールを送ってきたのは、かみつくである。
Episode235 抜糸

みやびの趣味のひとつ。それはキルティングの糸に爪をひっかけてプチプチと糸を抜いていく事。人間の子供がエアーパッキンのプチプチを一個一個潰していくのにも似た面白さがあるらしい。
故に、我が家ではキルティングのクッションカバーやソファカバーは無惨な状態となり果てる運命にある。
そして彼女の爪の被害を受けたのはキルティング製品だけではなかった。
避妊手術の後、抜糸してもらう為にみやびを動物病院へ連れて行くと……。
「糸、なくなってますね」
そう、彼女は自分のお腹を縫い合わせてあった糸も一目ずつ丹念に抜いてしまっていたのだった。
傷口、開かなくてよかった……。
Episode237 ステルスファイター

自分と同じ色だから――か、どうかは知らないが、加藤は黒いものが大好きだ。
かみつくと硝が楽しく遊んでいるPS2(もちろん黒)の上でよく寝ている。Oちゃんが黒いズボンをはいて硝ん家へ行った時もOちゃんの膝の上からどこうとしなかった。かみつくの黒い仕事カバンなんか大のお気に入りで、よく上で伸びて寝ている。
風日が遊びに行った時も風日の黒髪にじゃれ、風日の黒いバッグの上で寝ていた。
どーも加藤にはステルスファイターの素質がありそうだ。
Episode239 黒が好き

かみつくが久しぶりに硝ん家に遊びに行っら、玄関の前の硝の原付の上に、ばかでっかい黒猫が座っているのが見えた。
「おー! 加藤ー! 元気でいたかあ?」
あ……れれ? この猫、尻尾が2本ある……えっ、えええええっ!
「ぎゃあああ! 加藤が増殖したああっ!」
そう。馬鹿でかい黒猫は、実は2匹の黒猫が仲良くだんごになって座っているシルエットだった!
2匹目の加藤はその2週間ほど前に加藤に連れられてやってきた。おそらく秋生まれ。推定3〜4ヶ月のオス。どこかで長毛種の血が入ってるらしく、元祖加藤よりも毛がフサフサ。
最初は警戒してたけど、今では抱き上げても平気だとか。
どこかで飼われていた子が迷子になって、たまたま会った加藤が『同じ色のよしみ』で連れ
て帰ってきたらしい。
硝のとーちゃんには「ちびくろ」と呼ばれて可愛がってもらっているそうな。
こーなったら。この名を付けるしかないでしょう。
という訳で、硝ん家の2匹目の黒猫は、めでたく「加藤”ちび黒”四郎」と命名されました。
Episode241 お兄ちゃんっ子

硝が「かみつくさん来た時でないと、でけんから」といって、久しぶりに硝家を訪れたかみつくを手伝わせて加藤”ちび黒”四郎のシャンプーを敢行。
血を見る大惨事になった。
が、ふわふわつやつやのちび黒はとてもカワイイ、のでまあ良しと……したかったが、そのカワイイちび黒は一瞬しか持たなかった。
ちび黒は加藤三郎をそれはそれは尊敬していて、三郎のやることをなんでも真似したがる。 綺麗になったその日、ちび黒四郎と加藤三郎は連れ立って、公園の砂場で遊びほーけたらしい。夕方のご飯に現れた2匹は、見事な程全身砂まみれだった。
加藤三郎の馬鹿〜!(硝&かみつくの叫び)
Episode242 猫のぱらいそ

加藤三郎が、最近とても気に入っている場所。それは硝の部屋の押入れ。
ベッドでふすまを押さえているにもかかわらず、加藤は片手でスパーンとふすまを開けて中
へもぐる。
砂だらけ、泥だらけの猫に布団に潜られたらかなわん。
かくして押入れ下段を舞台に、加藤三郎と硝の追いかけっこが始まるのである。
かみつくは「しゃーないやん。暗くて狭くてぬくい所は、猫の
天国なんだから」と高みの見物?
Episode244 女帝様

3匹の弟どもの上に君臨する、しいお姉ちゃん。
しいちゃんはプライドが高い。気位が高い。馬鹿遊びにいまだ興じる弟達を「ダサいわ、イモね」と言いたげにただ見ている。
人間なんかに甘えているところは見せられない、とばかりに、弟たちが居ると硝の膝にさえ乗らない。もちろん弟たちが居たら「かまって」なんて絶対に言わない。そもそもあんまりかまってと言わない。りりしい(加藤三郎かまえもんとは、すごい違い)。最近は「人間なんて下僕よ」とでも言いたげだ。
かみつくは昔こんな雰囲気を持った猫を見た事があると言う。
ペットショップを営んでいたお父さんが仕事の関係で預かった世界チャンプの血統のロシアンブルー。それこそ「どう。私、綺麗でしょ」といった、王侯貴族顔をしていたと。
で、最近しいちゃんは『陛下』『女帝様』と呼ばれて、崇め奉られているのである。
Episode245 大雑把?

かみつくいわく「猫って、ぬくくて、居心地が良くて、安心できる所でも最初はとにかく丸くなるのが普通だよな」
なんだけどチャー君は硝のベッドの上だとその常識からずれた寝方をする。
最初っから、これ以上は引き伸ばせませーんというくらい伸びて、お腹を上に向けて、おまけによだれたらして、寝る。
そのあまりに人間くさい寝姿を見て「えーい、こうなりゃ人間並みに布団かけてやれー」って硝の布団を上から掛けた。爆睡したまま身じろぎもしない。
硝とかみつくの会話。
「これは大物なのか、馬鹿なのか、どっちや?」
「いや。多分、何にも考えてないンやと思う」
「おおざっぱなんか……」
でもねー、風日が前に飼っていたマーシーって猫は風日の隣で枕に頭乗せて、上向いて、掛け布団の縁に前足の先をちょこっとかけて寝たりしてたよ。
このページのイラストはすべて霜月楓さんから頂きました
