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その他の話 1



 Episode7   回るゴキブリ! 

 さかちゃんはゴキブリが嫌いだ。
 あんなもの好きな人間の方が少ないだろうが、彼女はソレに近づくのが恐ろしいあまり、ゴキブリホイホイにゴキブリがかかっていても捨てられず、家族の誰かが捨ててくれるまで、一週間でも十日でも、恐怖におののきながらじっと耐える。
 私ならそんなものが家の中にある方が嫌だから、見つけ次第速攻で外のゴミ箱へ直行させるだろうが、まあ、そこは人それぞれ。
 ある日そんなさかちゃんがお風呂に入ろうとすると……
 いたのだ、アレが。
 彼女がかけ湯をしようと手を伸ばした、その洗面器の中に。
「ぎゃ――っっ!!」
 彼女のあまりの声の大きさにゴキブリが恐れをなした、かどうかはわからないが、とにかくそのゴキブリは慌てふためいて《垂直の壁を登る》という特殊技能を使う事を失念してしまったらしい。
「あ、人間や! ヤバイやんけ、はよ逃げな!」
 と気ばかりあせり、足だけは懸命に動かしていたのだが逃げる事ができない。そう、そのゴキブリはただひたすら走っていた。
 グルグル……グルグル……
 まるい、洗面器の底を。
 さかちゃんは語った。
「アレは顔に向かって飛んできたゴキブリとおんなじぐらい怖かった」と。
 なんかこの話を聞いて以来洗面器の中でグルグル回っているゴキブリの映像が頭から離れない。一瞬、笑える光景だと思ったんだけど、ずっととなると気持ち悪い……。って、被害者増やしてたらごめんなさい。



 Episode17   ブラジルで聞いた怖い話  
 
 もう10年程前のことだが、かみつくが一人でブラジルへ行った。
 なぜブラジルかというと愛しのアイルトン・セナの故郷だからだ。彼女はポルトガル語も英語もダメだし、海外旅行にも行った事がなかった。だから初めは添乗員付のパックツアーに申し込んでいたのだが、参加者が集まらずツアー中止となった。でも、折角とった休みを無駄にしたくない、と個人旅行の手配をしてしまったのだ。
 幸い、彼女はブラジル滞在を楽しんで無事帰ってくる事ができたが、たまたま知り合った日本語堪能な日系人から怖い話を色々と聞かされたそうだ。いわく
「ブラジルには鍵のかかる屋内にしか自動販売機がない。なぜかというと路上にそんな物を置いておくと夜の間に自販機ごと盗まれてしまうから」
「ブラジルでは殺人は日常茶飯事である。故に万が一、人を殺してしまったら誰かに見られる前に死体を自分の家に運び込め。そして、警察に連絡して賊が押し入ってきたので殺したと云えば、捜査もなされず、すべてはまるく収まる」
 いや、ホントだってば、別に彼女を脅かす為に大袈裟おおげさに云われたわけじゃないみたいだよ。
あっちこっちで似たような話聞かされたそうだから。



 Episode38   キーボード  
 
 デスクトップの時にはこんな事はなかった。
 それとも、これが起きなかったのは運が良かっただけなのか? 今回がたまたま運が悪かったのか?
 カチャカチャッ!
 まだ買って2ヶ月にならないノートパソコンに掃除機をかけていた私は妙な音に気づいて慌てて掃除機のスイッチを切った。柔らかい毛のついた掃除機のアタッチメントをキーボードの上からどかしてみると……
「あ――っ!」
 私の眼に飛び込んできたのは整然と並んだキーボードの一角に空いた不自然なくぼみ。
 ない!
 エンターキーが……!
 そう、キーボードの隙間の埃を吸い取ろうとして、エンターキーを吸い込んでしまったのだ。
 タラー……
 これがマンガなら背景に縦線背負って、点眼の顔にでっかい汗が描いてあるところ。今はキーボードカバー使ってるから掃除機はかけていないとはいえ、前はデスクトップのキーボードにいくら掃除機かけてもこんな事はおきなかったぞ。ノートだからヤワなのか?
 とか思いながら、「間に合ったかなぁ?」と本体から外したホースを振ってみる。
 あったぁ! ありました、エンターキー。
 ホッとしたのもつかの間、キーをはめ直そうとした私は思いの外苦戦する事になった。なんていうか、ちっちゃいクセにはめ込む箇所がいくつもあって、こっちをはめておいてあっちをはめようとすると、こっちが外れて……
 じゃ、あっちを先にはめて、こっちを……
 ダメだ! ええっと、ここがこうだから……あうう……
 パキッ!
「へ……!?」
 わっちゃー……アカン、やってしもた!
 エンターキーの裏側に飛び出していた馬鹿みたいに小さな突起がひとつ、折れてしまった。接着剤でつけられるような代物じゃあない。
 そんな事情で今、私のパソコンのエンターキーは右側だけがくっついていて左側が浮いている。使えない事はないのだが、非常にストレスがたまる。だもんで、確定はカーソルキーを使っているのだが、やっぱり不便。
 でも、こういうのって、保証対象外だよね?



 Episode56   警察不信  
 
 私が勤め人だった頃、カバンを落としてしまった事がある。
 そう、財布ではなく、カバン。スクーターの後ろカゴにポンと放り込んで走っていたのだが、どうやら入れ方がまずかったらしい。どこかのカーブか段差の所でカゴから飛び出したようなのだ。
 真っ青になった。
 何しろ、通勤用のカバンだ。財布、定期入れ、スケジュール帳に弁当箱……、いっさいがっさい入っている。もちろん、定期やクレジットカード、免許証も。
 慌てて通ってきた暗い道を引き返したが、見当たらない。既に誰かが拾ってしまったんだろう。こうなったらいい人に拾われている事を祈るしかない。
 とりあえず、近くの交番に届け出た。
 そして一ヶ月後――
 もうカバンは戻ってこないものと諦めて、定期券やカバン、弁当箱、財布等々を買い直し、カード類も再発行してもらった私の元に1枚のハガキが舞い込んだ。歩いて1分半程の所にある警察署からだ。
「落とし物を預かっているから取りに来るように」と書いてあった。
 今頃?
 不信に思いながら警察署に行き、書類を書き込んで、くだんの落とし物を返してもらった。
 中身はすべて揃っていた。免許証、期限切れ寸前の通勤定期、再発行済みの為使用できないクレジットカード、現金、落とした時に連絡してもらう為の住所や勤め先、電話番号などを記入してあるスケジュール帳……
 なんで一ヶ月もたってから?
 せめて、警察署からハガキ(50円)を出すんじゃなく、電話(10円)をくれれば、一日早く受け取れたのに……
 税金も無駄に使ってるし……などと思いつつ、拾って警察へ届けてくれた人の連絡先を聞いて帰った。
 拾い主のご自宅が遠かった為、失礼だと思ったが電話でお礼を済ませる事にした。そして、受話器から聞こえてきた科白は……
「今頃取りにいかれたんですか?!」
 詳しい事は聞かなかったけれど、その口調から推して、きっと一ヶ月前に警察に届けてくれたに違いない。カバンの中には私の連絡先を示す物が色々入っていた。私は落とした直後に警察に届け出た。拾い主はすぐに警察に届けてくれた。
 なぜ、私に連絡がくるまで一ヶ月もかかったんだろう?
 私鉄の駅で定期を落とした知人はすぐに電話をもらって定期を受け取ったという。
同じ事がなぜ、警察にできないのか?
 以来、連絡先の入った物を拾ったら、警察に届けないで、直接落とし主に連絡をとってあげようと思う風日だった。



 Episode58   警察不信 U  
 
 買い物から帰った母がふと見ると、見慣れない猫が、実家で飼っていた猫の為に用意してあったエサを食べていた。
 当時出入り自由で猫を飼っていた実家では、留守中でも2階の窓を開けている事が多く、よくよその猫が入り込んでいた。またか、と思いつつ傍へ寄ると、歯をむき出して威嚇いかくされる。しかも、異様に大きい。
 これは……猫じゃない!
 そう、毛を逆立て、尻尾をふくらませて攻撃姿勢をとっていたのは、なんとアライグマ!
 実家の雄猫はテリトリーを守ろうとするどころか、脅えて逃げてしまい、母もその恐ろしさに足がすくんだという。アライグマ=ラスカル=かわいい、なんて図式は成立しない。
 身の危険を感じた母は即座にその場を去ろうとした。が、襲いかかってきたのだ、牙と爪を持った、猫よりはるかに野生に近い大きな獣が。
 そして、うっかり逃げた方向が、外ではなく、2階への階段。
 なんとか、アライグマに侵入される前に部屋の襖を閉める事ができたが、身動きがとれない。幸い、その部屋にも電話があったので、警察へ連絡、なんとかしてくれと訴えた。
 実家から警察署(お巡りさんが不在の事も多い派出所ではない。広い駐車場にパトカーが何台も停まっている大きな所)まで、歩いて1分半程である。
 にも関わらず、いつまで待っても助けはこなかった。
 そこへ何も知らない妹が帰宅。
 やはりアライグマに追い回されたが、母と二人がかりでなんとか形勢を逆転、アライグマを2階の一室に閉じこめる事に成功した。
 しかし、そこは窓の閉まった部屋。放っておくといつまでもアライグマがそこに居る事になる。再び警察に電話した。
 だが、やはり、待っても待っても、助けはこない。
 自室をのっとられていた妹が決意して、アライグマのいる部屋へ……。素早く窓を開けて、退散する。待つこと、しばし……。
 そっと、中を覗いて見る。
 やった!
 アライグマがいない。開いた窓から出ていったのだ。
 ふぅ――っ、と大きな溜め息をついて、へたり込んだ二人だったが、一応アライグマが出ていった旨、警察に連絡を入れた。
 と、来たのだ。5分とたたないうちに。警察官が二人。事情聴取とか云っている。
 母と妹の頭の中で、プツンという音がした。
 後でわかった事だが、そのアライグマは近所のペットが逃げ出したもの。しばらくして捕まったそうだが、飼い主は「お騒がせしました」という詫びすらいれにこなかった。



 Episode60   童顔  
 
 あれは、かみつくが20代も半ばを過ぎた頃……
 昼休み。ひとり、勤め先の裏手にある神社のベンチに腰掛けて一服つけていたかみつくは、怖い表情かおをしたおばさんに声をかけられた。
 そのおばさんは県警の補導係で、かみつくを見て、学校をさぼって煙草を吸っている不良と間違えたらしい。
「違う! 私は未成年じゃない!」
 といくら主張しても信じてくれない。
 このままでは警察署に連れて行かれてしまう。身分証明書ったって、自動車免許を持っていない彼女が持っているのはスタッフルームに入るときに提示する社員証くらい。(販売業なので店員の窃盗とかに関して結構きびしくて、入る時に社員証を預けて、出るときに持ち物チェックを受けてから返してもらう)
 うーん、あれって名前の他に何か書いてあったっけ? と思いつつ引っぱり出してみると……
 よかった! 生年月日が記入してあるじゃない。
 勝ち誇ったように補導係に社員証をつきつけたかみつくだった。
 それにしても、一体いくつに見られたんだろうね?



 Episode63   わがままなやつ  
 
 私がまだ実家にいて同人誌なんてものを作っていた頃。
 小説の原稿が〆切に間に合わなくなりそうで、編集長という事になっていたガラの家に泊まって書く事になった。
「缶詰にして横でさぼらんように見とったる」
 というより、私の母が働いていたので昼間家にいると、何かと雑用をこなさねばならなくなり、個室を持っていなかったので夜中に執筆するわけにいかなかったから。
 その点、硝には自分の部屋のみならず、当時家を出ていたお兄さんの部屋まで使えるという利点があった。
 ところが……
 原稿を書こうと用意してもらったちゃぶ台にむかった私の傍に硝がくっついている。いや、くっついているだけならいいのだが、これから彼女が書こうとしている小説のプロットを延々としゃべり続けるのだ。
 気が散って、小説など書ける訳がない。
 寝不足に超弱い私が、何の為に夜中に起きてると思ってるんだ。(ま、そのかわり昼寝しちゃうけど)
「ええ加減にして! アンタは私に原稿を書かせたいのか? 話を聞いて欲しいのか?」と訊くと
「原稿は書いてもらわな困るけど、話も聞いて欲しい」
 おい……
 そんな器用な事ができるか!
 これなら、家で書いてた方がよっぽどマシじゃないか。頭にきた私は硝をその部屋から追い出した。
 が、追い出すのが遅すぎたらしい。結局その夜は原稿を仕上げられず、途中まで書いた原稿を置いて、家に戻ったのだった。



 Episode79   ボケボケ  
 
 きのうの朝、新しいEpisodeを書いてトップページの更新の日付とEpisode No.を訂正しようとしたら
 アレ?
 前のEpisodeの更新日が今日になってる。
「わっちゃー、きのう間違えて入力したか」と思って掲示板にもそんな事を書いたけど……
 なんかひょっとして前の日に翌日UPするつもりでEpisodeを書いて、日付も直していたのに、UPする前に新しいEpisodeを書いたような気もしてきた。
 うーん。
 きのうは起きた時から頭が痛くてボーッとしてたのは確かなんだけど。
 なんか今日考えてもわかんない。
 まだ、ちょっと頭痛いし。
 こんな大ボケな状態じゃEpisodeなんて書けないよなァ、お休みしちゃおうかな?
 なんて思いながら、こんな事を書いている私だった。すみませんねェ。



 Episode86    押し売りする自販機  
 
 風日の旦那が一人暮らしをしていた頃。
 会社の忘年会の帰りに自販機の前を通りかかって、急に缶コーヒーが飲みたくなった。で、小銭を探したけど、そういう時に限って持っていない。だけど、運良く千円札が使えるタイプだったので、千円札を入れ、おじさんの顔が描いてあるコーヒーを買おうとボタンを押した。
 ガチャン。
 取り出し口からコーヒーが出てきたが、お釣りがでない。
 連続買いできるように、返却レバーを回すまでお釣りがでないようになっていた。便利なようで面倒くさい。返却レバーを回す。
 ――?
 も、一回まわす。
 んにゃあ?
 何回やってもお釣りがでない。
 別に釣り銭切れのランプはついていなかったので、返却レバーが壊れていたのだろう。
 う――ん……
 真夜中、道端に置いてある自販機でのトラブルだ。どうしようかと思ってもどうしょうもない。で、仕方がないのでまた見本の缶の下についているボタンを押した。
 ガチャン。コーヒーが出てくる。
 ガチャン、ガチャン……
 9本目のコーヒーが取り出し口に転がり出た時、釣り銭口で10円玉が一枚カチャンと音をたてた。その場で1本だけコーヒーを飲んだ旦那は8本の缶コーヒーを両手に抱えてアパートへと帰っていった。
 この翌日から帰省していた旦那は大阪から帰った時、8人のおじさんに出迎えられたという。



 Episode98   あぶないメール  

 あちゃ!
 そのサイトが開いたとたん、自分がバカをやったのに気付いた。目の前にアダルトサイトのトップページが開いている。
 しもたー、うっかりしとったー。
 と慌てて右上のxマークをクリックする。が……
 えーっ、なんでーっ!!
 インターネットエクスプローラーのウィンドウは閉じるどころか、さっきのトップページの上にもっとエッチそうな新しいページが開いている。
 うひゃっ!
 何度か両方のページを閉じようとしたけど、全然ダメ。
 ふと思い出した、旦那がしてくれたある芸能人がしていた話。
 奥さんの留守中にネットでエッチなページを開いたら、何をやってもそのページが閉じなくなった。慌てて、コンピューターに詳しい友人に電話をかけたけれど、そういう時に限ってつかまらない。そうこうしているうちに奥さんが帰ってきて……
 その時は、へーえ、そんな事があるんだー。そりゃあ大変だったねー。でも、うちはそんなエッチなページなんて開かないから関係ないよねー、ハハ……、で終わっていたけれど、これがそうなんだー。
 あうう……
 そもそもなんで私がそんなサイトを開いてしまったかというと
「メアド変更のお知らせ」という一通のメールが届いた。
それにはメアドを変更したということの他に「ちょっとエッチで面白いサイトを見つけたから覗いてみて!」と、ひとつのURL。差出人は「誰だかわかるよね?」
 その親しげな文体は最近ネットに繋いだばかりのある友人を思い起こさせた。
 で、「エッチなページってあとでとんでもない料金請求されたりする事があるらしいから気をつけなよ」と返事を書き、送った。
 翌日。メールチェックをしたら、宛先不明でくだんのメールが戻ってきていた。
 なんだあ? 返信したんだから打ち間違いじゃないぞ。間違ったとしたらあっちだ。それじゃ、変更のお知らせの役にたたないじゃないか、と思い、その「メアド変更のお知らせ」を選択し……
 アウトルックエクスプレスの受信トレイの下半分の窓に開いた本文のおしりにくっついているメーアドを見た。するとそのすぐ上にURLが書いてある。
 あ、なんだ、こいつHP持ちだったんだ、だったら話は簡単、このHPにいってみればいい。
 となーんも考えずにひょいと目の前のURLをクリックした。
 そう、賢明なる読者諸氏にはもうおわかりだろう。うっかり者の風日はメール本文が見えない状態で差出人のメーアドとタイトルなしのURLが並んでいるのを見て、なんとなくそれが差出人のHPだと思ってしまったのだが、もちろん違う。それはメール本文にも書いてあった通り「エッチな」サイトのものだった。
 と、いう訳で風日はどーしても閉じる事ができないサイト、というヤツを開いてしまった。とにかくハッと気付いて回線を切断。それでもちょっと心配になって電話線を引っこ抜いた。
 考えてみたら向こうが云ってきたメアド自体でたらめだったんだ。
 あっちが意図したようにじゃないけど、あのURLをクリックしちゃったっていうのは見事にひっかかったって事で……
 腹立つなー、もう!
 オフラインになって落ち着いて閉じてみようとしたけどやっぱりダメ。どーしてもI..E.を終了する事ができない。
 で、I..E.を開いたまま再起動。
 ありがたいことに、これはちゃんと受け付けてくれた。恐る恐るI.E.を起動。よかったー、ちゃんとホームが表示されるぅ!
 ほっと胸をなでおろした風日は即座にさっきの危ないサイトの履歴とぶっそうなメールを削除したのだった。



 Episode100   プロポーズ?  
 
 芸能人の婚約発表会見とか見ていると必ず出る質問が
「プロポーズの言葉は?」
 風日も友人達が結婚をお祝いしてくれた席でしっかり訊かれました。
 でもねェ……はっきり云ってそれは回答不可能な質問なのよ。
 なぜって風日はプロポーズされていないから。だからって風日がプロポーズした訳でもないよ。
 じゃ、なんで結婚する事に決まったかって?
 それはね……
 ある時旦那(まあ、当然その時はまだ旦那じゃなかったわけだけど)が云った。
「あのな……もし、オレが『結婚して』って云うたら、結婚してくれる?」と。
 それを聞いた風日はどう思ったかっていうと
「『もしィ?』もしってなんやねん!」だった。
 なんかムカつくー!
 思い切りが悪いっていうか、他の事はともかく、こういう時くらい男らしくバシッと決められないの? よっぽど「もし?!」と聞き返してやろうかと思ったんだけど、そこで風日は考えてしまった。ここでそんな事をいうとこの人は
「あ、なんでもない。冗談、冗談……忘れて」
 とか云っちゃってこの次そういう話題を持ち出すまでに何ヶ月もかかるかもしれない、と。それはちょっと嫌かも。で、なーんか納得いかないなァ、と思いながら、
「うん」と云ってしまった。
 そう、風日は「もし」という仮定の下にされた質問に返事をしただけで、正式に結婚を申し込まれた覚えがない。んだけど、結局そのまま結婚しちゃったのよねー。
 だから、機嫌の悪い時、旦那の困った顔が見たくて、たまーに
「どーせ私はプロポーズもされてませんからね」
 と云ってすねてみせるのだった。




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