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今夜の番組チェック
その他のはなし3
Episode161 ? な依頼
こんなメールがきた。
「先日、貴ホームページにて作品を拝見しました。
温かいお話をお書きになるみたいなので当社内にて検討しましたところ、わが社との契約のうえ、【エッセイ・コーディネーター】として、作品を書いていただきたいと思い、ご連絡いたした次第です。
契約内容や、作品のテーマについては、追って連絡差し上げる予定ですので、興味をもたれた場合には、折り返し連絡ください」
エッセイコーディネーター? なんだ、それ?
仕事を紹介するから登録料を払えとかいうような詐欺まがいの話じゃないかしらん? 風日のところにはHP制作の仕事を斡旋するから高いCD-ROMを買えとか、高い授業料を払ってうちの通信講座を受けろとかいった勧誘電話やダイレクトメールが結構きたんだよねー。
と思いつつも一応詳しい話を聞かせて欲しいと返信したら、こんなお返事が。
「当社では、エッセイ・コーディネーターという契約作家の先生にテーマに基づいた短編小説を書いていただき、WEB上で提供する事業を計画中です。商品をただ売るのではなく、感動する・心打たれるような物語を添えて、お客様にお届けするというビジネスモデルを考えています。
あなたが1つ物語を書き、その物語を添えた商品が10個売れた場合その商品10個分の総利益の10%をお支払いします。お支払い金額は0円以上ということです。マイナスはありません」
ホントは「風日先生へ」で始まってもうちょっと長かったけど、大体こんな感じ。まあ、こっちからお金払う事はないみたいなんで詐欺的商法じゃないみたいだけど、商品に物語を添えて売る?
何か欲しい物があったとして短編小説の値段をプラスされた品物を、逆に小説が読みたいからと云っていりもしない商品を買う人間がいるだろうか? 新しくつくったばかりの会社らしいけど一体どういう商売なの?
そんなのうまくいくのかなァ?
メールの発信時間みたら夜の8時とか9時とかだし。なんか普通の会社って感じじゃないよね。社内で検討した、とか書いてあるけど社員って社長一人で、自宅兼事務所のマンションの一室で仕事してるとか? (現に会社の住所はマンションみたいだし)
旦那に話したら版権はむこうの物になるって事だから、商品は売れなかった、とかいって作品の二次使用で儲けるつもりなんじゃないの?なんて云われた。
しかも、向こうから「作品を拝見した」と云って話を持ってきたのに選考の為に短編小説を1本送れ、という。
ホントに私のエッセイ読んでくれたのかな? どこかのリンク集に書いてあった事をそのまま書いたんじゃない? 「温かいお話をお書きになるみたい」なんて書き方してるし。ちゃんと私の話読んで気に入ってくれたんなら、それでいいじゃない。
しかも要求してきたのが短編小説? エッセイならともかく、私の小説は長くて暗いぞー。
おまけに「フォーマット;WORDファイルにてA42枚以内」という訳わかんない条件で。
A42枚って何? フォントサイズや字間行間で全然長さ違っちゃうよ? 普通は「何文字X何行程度のテキストファイル」じゃないの?
私は一太郎使ってるからWORDはパソコンにプレインストールされてたけど削除しちゃってるし。もうちょっと納得いく話だったらWORDいれなおしてマニュアル買ってきてもいいけどさ。
わざわざそこまでする話じゃないよねー。
Episode162 平和なもめごと
お正月、かよりんとそのご主人に会った。別れ際、今から二人で神社に行くという。
「初詣だね」
というと、初詣はすでにすませているとのこと。そして思い出したと云ってこんな質問をされてしまった。
「おみくじの中吉と吉ってどっちが上?」
かよりんの話によると今年二人で初詣に行っておみくじを引いたらご主人が吉でかよりんが中吉(あれ? 逆だったっけ? )だったそうでどっちが良いかでもめているんだって。
つまり良い方から順に「大吉・中吉・吉・小吉」なのか「大吉・吉・中吉・小吉」なのか?
訊かれた風日もわからなかった。
末吉と小吉ってやっぱり末吉の方が下なのかな? とか余計な疑問が浮かんだだけ。こないだ姪っ子がひいたおみくじは確か「上々吉」だったし、神社によって違うって事もあるかなァ?
ちょっと悩んでいるとかよりんが
「でもね、目の前でおみくじひろげてた男の子のって凶やってん。お正月からそんなん入ってんねんねェ」と云ったので
「すごい! レアものやん」と云ってしまった風日だった。
で、かよりんと旦那は今年の運勢に決着をつけるべく、二人仲良くおみくじを引き直しにでかけたのだった。




Episode166 あてにしていい?
風日の家のキッチンと居間の間はカウンターになっている。といっても物を置ける幅は思いっきりパーをした時の風日の親指の先と小指の先の間より狭いから壁に1.5m
X 55pくらいの長方形の穴があいている、と思ってもらった方が正確に想像してもらえるんじゃないかな?
居間には低いテーブルが置いてあって、食事の時はまずカウンターの上に料理をのせて居間の方にまわり、テーブルにおろす。食べ終わったときは逆の方法で食器を片付ける訳だ。
時々、風日がおみそ汁をついだり、ご飯をよそったりしている間に旦那がカウンターの上の料理をテーブルにおろしてくれる事がある。
こないだも風日がキッチンから回ってみると旦那がサラダのはいったボールをおろしてドレッシングと混ぜてくれていた。
「シェフしてるねェ」と云うと

「このくらいでシェフなんて云われるといかにアテにされてないかわかるな」と云う。
『嫁さんが働きに出てこづかいが増えるより、こづかい少なくても家事やらずにすむ方がいい』
と云った事のある旦那に家事の手伝いを期待していないのは確かだけど
「アテにしていいの?」
と訊いてみた。と、返ってきた答えは
「それは困る」
「アテにされてないのがご不満みたいな口ぶりやったから」
と云うと困ったような表情をして
「そこが難しいとこなんやな。アテにされたら困るけど、あんまりアテにされてないのも寂しいというか……」
男心は複雑?
Episode168 板ばさみ
小学1年のKちゃんの娘が
「Eちゃんのがかりは……」
というように『係』を単独で『がかり』と発音するという。
Kちゃんがそれは違うと云って
「給食係とかの時は『がかり』やけど、さっきみたいな時は『かかり』って云うねんで」と教えても
「先生が『がかり』って云うもん」と云って直そうとしない。

確かめてみるとEちゃんの担任教師は『係』を常に『がかり』と発音していた。
しかしKちゃんは言葉遣いには結構うるさい方だ。で、
「先生が『がかり』って云っても『かかり』が正しいから『かかり』って云いなさい」
と、娘をしかる。しかし、小1の子供にとって担任の先生の影響は絶大だ。いくら云ってきかせても
「だって先生が……」
となってしまう。クラスの友達もみんな先生と同じように発音しているのだから、一人だけ『かかり』と云うのは勇気のいる事でもあるだろう。かといって家で『かかり』、学校で『がかり』と使い分けられる程器用な年齢でもない。
「だいぶ困ってると思うわ」
と面白そうに話してくれたKちゃんに
「娘しかるより、今更先生の発音直すのが無理でも1回『先生は がかり って云うけど本当は
かかり が正しい』ってクラスの子に云ってもらうように先生に話しした方がいいんじゃない?」
とは云ってみたものの、そんな事が原因でEちゃんが変に先生に目の敵にされないとも限らない。
まあ、明るいKちゃんのおかげでEちゃんものびのび育っているみたいだから、傍でとやかく云う問題でもないのかもしれない。
それにしても、それぞれ勝手な事を云う大人の板ばさみになる子供の気持ちを思うと胸が痛むわ。
Episode170 あだ名の由来
かみつくには八重歯がある。映画にでてくる吸血鬼の牙のような立派なやつが。
で、中学の時その歯を見たクラスメートに
「アンタ牙があるな。かみつくんやろ」
と云われて実際にその子にかみついたから「かみつく」と呼ばれるようになったとか。

高校の時、春子さんと呼ばれている子がいた。クラスも部活も違ったのでフルネームを知らなかった。それでもお互いの部室が近かったり、共通の友人がいたりしたので話をする機会はちょくちょくあった。
そして知り合ってから随分たってから彼女の本名が春子ではないと知った。
「なんで春子さんなん?」
という質問にちょっと嫌そうに答えてくれたところによると……
彼女の先輩に春子という人がいて、彼女がその先輩といっしょに歩いている時に別の先輩が
「春子!」
と声をかけたそうだ。彼女はその呼びかけが部活の先輩からだと思ったから呼ばれたのが自分でないのはわかっていたけれど、無視したとか云われるのも嫌だし、とか考えて振り返った。
それ以来、彼女は春子と呼ばれるようになり、すっかりそれが定着してしまったという訳だ。
ブッチさんと呼ばれていた子のあだ名の理由も長いことわからなかった。
本人の言によると幼稚園の時「とんでけブッチー」という番組があって、それにでてきたブッチーという犬(の人形)に似ていると誰かに云われたのが発端らしい。二十歳過ぎてもまだそう呼ばれていたから、実に由緒正しい(?)あだ名といえる。
パタは、いつもパタパタしているから……かな?と思っていたのが、パタリロに似ている、と云われたせいと発覚。云われてみればなるほど(ゴメン)。
久代で「ひさぼー」とか、松本でまっちゃんとか、すぐ納得できるあだ名じゃない人がいたら、由来を訊いてみるのは結構面白いと思う。
Episode172 びしょ濡れヒーロー
地面から垂直に金属のパイプがのびだし、大人の腰くらいの高さの所でU字に曲がってその先端に蛇口がついている、そんな水道を思い浮かべて欲しい。

神さんが子供の頃よくキカイダーごっこをして遊んでいた。
キカイダーであるからには高い所からさっそうと登場しなければならない。
で、キカイダー役の彼が登場の舞台として利用したのが前述の水道。結構丈夫にできていて、何度も上にのって遊んでいてもなんら差し障りはなかった。その日までは……
蛇口と逆さU字になったパイプの上端に足をのせて、メロディを口ずさみ、ギターをひく真似などしようといつものように水道の上に飛びのった瞬間!
度重なる蛮行に金属疲労をおこしていたのか、神さんが成長して限界荷重を越えてしまったのか……
水道のパイプがポキリと折れた。
噴水のように吹き出す水。
ちびキカイダーはびしょ濡れ。とてもじゃないが悪人退治どころじゃない。
それどころか、器物を破壊してしまった神さんの方が悪人になってしまった。その後彼がどういうおしおきを受けたかは定かでない。
注)「人造人間キカイダー」は特撮物のテレビ番組で悪の組織のアンドロイドが悪事を働こうとするとどこからともなくギターの音色が聞こえてきて、一体何事かと皆がキョロキョロしていると崖の上とか屋根の上といった高い所でヒーローがギターを弾いていて、一同の注目が集まった時点でカッコ良く飛び降りてくる、という決まり事があった。
Episode176 ころん

猫が毛づくろいをしているところをご覧になられた事があるだろうか?
仰向きになって片方の後ろ足を高くあげ、股に顔をうめるように上半身をひねった様子を。太りすぎの猫がこれをやろうとするとバランスをくずしてころんと後ろにひっくり返ったりする。
硝がいつもエサをやっているノラ猫のちび太君はひなたぼっこをしている石段の上でふと毛づくろいしたくなり、ころんとひっくり返って石段から転げ落ちるそうだ。ノラのクセに太りすぎとはけしからん(?)というのは冗談で、実はかみつくも後ろに転がる事があるという。
以前本屋で勤務していた彼女は、いつも本がぎっしりはいった重い箱を運んでいたせいで腰を痛めてしまった。で、あぐらをかくとふんばりがきかずに後ろへころんとひっくり返ってしまう、というのだ。
笑い事ではないのだけどそれを聞いた時は腰が悪いせいじゃなく、ちび太君のように体がまるい(ゴメン。でもちょっぴりふっくら体型なのは確かだし)せいだと思ってしまったのでつい笑ってしまった。
そして「おもしろそうだからあぐらかいてみてよ」というリクエストはあえなく却下。
股関節がかたくてあぐらがかけないって知り合いもいたけど、あぐらかくと後ろに転がるっていうのもなかなか味のある光景じゃありませんか?
Episode177 ものは云いよう
高校の時風日は髪がとても長かった。しかも量が多い。

切り下げ前髪にしてもまだうっとうしい感じだったので普段は後ろの髪はそのまま垂らして、両横の髪を真後ろで縛る髪型(まあ、わかってもらえなくても構わないけど)にしていた。
ある日、たまたま髪が乱れたので束ねていたゴムを解き、長いおかっぱというような状態で学校の廊下を歩いていた。と、同じ中学出身で気安い間柄だったF君とばったり出くわした。
足を止め、なんか変だなという感じでマジマジと風日の顔を見るF君。そしてあろう事かこんな科白をのたまったのだ。
「かわいくないなァ」
F君らしいといえばらしい言い草なんだけどさ、やっぱ女の子にむかってそれはないんじゃない。つき合ってる訳でもない女の子にそこまで気をつかっていられない、と思ったのかどうかはしらないけど
「いつもの髪型の方がかわいいよ」
とか云えないのか?
とプリプリしつつ、やっぱりショックだったのかそのまま洗面所に直行して髪を結い直した風日だった。
フン!
Episode178 痛恨の? ミス

風日って高校の頃は漢字をたくさん知っていた。(少なくとも今よりは)
小説を書くためにいつも辞書を持ち歩いて、暇な時とか引くんじゃなくて眺めるって事もよくやってたから。そして(これが一番肝心なのだけど)ワープロなどという文明の利器を持っていなかったせいで自分の手で漢字をいっぱい書いていたから。
高2の時の担任だった生物教師がよく板書の漢字を間違えた。
で、風日は「その字、間違ってます」なんて指摘して嫌がられていたりして。先生しまいには黒板に書く前に風日に「XXってどう書くんやった?」とお伺いをたててくるようになっていた。
あるテスト明けの日、その生物教師と廊下で目があった。
と、うれしそうに寄ってくる。なんかご機嫌だなァと思っていたら、
「いやァ○○(風日の旧姓)でも漢字間違える事があるねんな、安心したわ」だって。
その時はまだ答案返してもらってなかったんだけどさ、後で見てみたらしょーもないミスをやらかしていた。
ああ、あの時の生物教師のうれしそうな表情が忘れられない。
生徒がテストで間違えたからって、そんなに喜ばないでよねー。(しかも生物の解答としてはあっていた。ひらがなで書いときゃよかった)
Episode182 卒制難民?
風日は某デザイナー学校のアニメーション科を卒業した。
そこでは大学の卒論のかわりに8oフィルムを使った3分程の個人制作と16oフィルムを使った10分程のグループ制作のアニメーションを作らないといけない事になっていた。
最近はビデオテープを使って作られる事が多いのでちょっと勝手が違うのだけど、フィルムを使ったアニメーションというのは1秒間あたり24コマのフィルムに1枚ずつ絵(もちろんこれを描く事がメインの仕事になる、別に1秒あたり24枚描く訳じゃないけど)を撮影していく気の遠くなるような作業を必要とする。
まあ、細かい説明はおいておいて、ただ凄く手間暇かかる作業だって事だけわかって欲しい。しかも一応先生がいるとはいえ素人が手探りで作る訳だから、しでかした失敗数知れず、気が付くと卒業式までの日程はどんどん短くなっていくのに作品の進行具合はからっきし……という事になっていた。
で、生徒達は可能な限りの時間をさいて作業に励んでいたのだけど、カメラを使う撮影となると学校以外では不可能である。
しかも16oのカメラは1台しかないのにグループ制作には3つの班があって、1班が使える時間は限られている。
そうなると……本来カメラ使用の割り当て時間にはいっていない夜中に作業をするしかない。だけど……
学校って9時半には絶対出て行かなきゃいけない事になってたんだよねェ。

でも、ブッチさん達の班の何人かが学校側に内緒で居残って作業していたある夜。
「ああっ! ここ色塗り忘れてるぅ」
撮影室でセル(キャラクターの絵が描いてある透明のシート)の1枚を手にしたブッチさんが叫んだ。
「しゃーないなァ、ちょっと待っててブッチ塗ってくるわ」
ブッチさんは塗り忘れがあった小さな箇所に手を入れる為に、絵の具その他の道具が置いてある作画作業用の教室へむかう。
撮影室に残ったメンバーが
「あと半分ぐらいやなぁ……」なんて話をしていた時
「みんなごめん〜!」ブッチさんが飛び込んできた。
「開けてしもた……」
「え……?!」
本来、生徒が学校にいられるのは夜9時半までと書いた。それ以降は警報装置が働き、外へと続くドアが開くと警備員が飛んでくる。
やっぱり眠かったのか、疲れていたせいかブッチさんはその事を忘れてうっかりその禁断のドアを開けてしまったのだ。(教室に置ききれない絵の具を非常階段に置いていたので、中の絵の具を使えばいいのに習慣的に外へ取りに行ってしまったらしい)
かくして、ブッチさん、おちかちゃん、K君、U君そして(おいおい、そんな事でいいのか?の)アニメ科教師の一人は夜中の3時に真冬の大阪の街に放り出されたのだった。
「どーしよー?」
もちろん電車は動いていない。歩いて帰れる程家の近い人間もいない。
結局、ふらふらとさまよううち終夜営業のミスタードーナッツを見つけて時間をつぶし、その後環状線で夜明けの大阪を3周。
やっとこさ学校へ戻ったブッチさんは塗り残されていた箇所に手をいれながらつぶやいた。
「面相(面相筆という筆)でチョンチョン……こ、これだけの為に、これだけの為に……」
彼らが撮影を再開したのは陽射しもまぶしい8時を過ぎた頃だった。
Episode183 同じ轍を……
神さんが子供の頃、
雲梯[にはまっていた時期があった。あの、ハシゴみたいなやつにぶらさがって腕だけで進んでいくヤツ。
ある時、何を思ったのか神さんはその雲梯に足をかけ、頭を下にして膝でぶらさがった。

そして、とてつもないピンチに落ち込んでしまった事に気づいた。
当時の彼の腹筋力が弱くて、逆さにぶらさがったはいいが、身体を起こして手でぶらさがり直す事ができなかったのだ。
頭のある位置から地面までは結構な高さがある。
そこまでこの話を聞いた風日は「それは大声で助けを呼ぶしかないね」と云ったのだが、神さんは違った。そんな事は考えつきもしなかったそうだ。
じゃあ、彼はそのピンチをどうやって切り抜けたのか?
落ちたのである!
足をはずしてドサリと、彼としては頭を打たないようにできるだけ背中をまるめて。
悲鳴をあげるどころか、息ができなかったそうだ。空気を吸い込む事ができなくて、主観時間でかなり長い間ただただ地面に横たわってのたうちまわった……
それでも、多分数分後にはまともに息ができるようになり、たいしたケガもせずにすんだそうだ。
し・か・し……
「でもオレ、もう1回おんなじ事やっとんねんでな」
神さんの告白に、なんて学習能力の低い男だろうとあきれかえった風日だった。
Episode193 縁は異なもの
Mちゃんのおかあさんがしばらく前まで住んでいた町に行くと、元隣のおじさんが
「アンタんとこの娘さん、まだ独身か?」
と訊いてきた。で、家に帰ったおかあさんはMちゃんに
「おじさんから見合いをしないか? と云われたけど、どうする?」
と訊いた。面倒くさいなー、断ろう、と思ったMちゃんだったが、そこでおかあさんが一言。
「おっちゃんの話やとかなり男前らしいよ」
どっちかというと「男は顔」という好みのMちゃんはその一言で見合いをする事に決めた。ま、見合いっていっても写真も釣書もなし、とりあえず喫茶店で会う手はずをつけてもらっただけ、といういたって気楽なもの。

そしてお見合い当日。どんなイイ男と会えるかと胸を高鳴らせて出かけたMちゃんは相手の男性を一目見て思った。
『おっちゃんの嘘つき……』
しかし――
それから間もなく、風日はMちゃんから結婚するという電話をもらった。なんと例の見合いの翌日にプロポーズされて承知してしまったという。
「一目惚れやね」
と風日が云うとすかさずMちゃんが
「一目惚れって云わんといて」
Mちゃんいわく、相手の男性の顔がMちゃんの好みだと思われたくない、という。そして先程の馴れ初めを話してくれた訳だけど、彼女は余程見合い相手の顔がお気に召さなかったらしい。それでも話をしてみるとフィーリングがピッタリで電撃婚約したんだからいわゆる一目惚れってやつになるんじゃないかと思うんだけどなー。
今では2児の母親として幸せな結婚生活を送っているMちゃんだけど、例のお見合いの話をもらった時にお互いの写真を交換していたら、見合いそのものが成立しなかっただろうと思うと人生ってうまくできているっていうか不思議っていうか。
Episode194 待ち合わせ
かなり早く待ち合わせの場所についてしまった風日は周りを見回して硝がまだ来ていない事を確認すると、割と見通しのいい場所で壁にもたれて待つ事にした。

そんなに人も多くないし、来たら硝が見つけてくれるだろうと思って、何を考えるでもなくボケーッとしているうちに待ち合わせの時間が過ぎた。硝のヤツ、遅刻だー。普段時間にうるさいクセに……ブツブツ……などと思いながら更に待つ。が、硝はなかなか現れない。
まさかどっちかが待ち合わせの場所か時間を勘違いしてるんじゃないだろーなー? なんて心配になってきた頃、風日の隣でやっぱり人待ち顔で壁にもたれて立っていた大柄な男性がその場を離れた。と――
「硝……?!」
なんと目の前に硝がいたりして。
「アンタいつからそこにおったん?」
「だいぶん前から」
「うそォ! 私が来た時には絶対おらんかった。来た時私がここに立ってたのに気ィつかへんかったん?」
硝は待ち合わせの時間の前にその場について、その時私がいなかったので壁にもたれてずっと待っていたのだと云う。一体いつから私と硝は男性一人を間に挟んでお互いを待っていたんだろう?
絶対絶対、私が着いた時には硝はいなかったんだけどなー。
Episode200 ワールドカップの夢の後
サッカーワールドカップ。たったひとつのボールの行方を世界中の人々が追い、感動を与えてくれる素晴らしいイベント――のはずなんだけど、オウンゴールした選手が射殺されたり、暴動が起こって死人や怪我人がでたり、器物が破損されたり……と、サッカーファンならぬ風日は

「たかがボール蹴りの事で死人までだすんなら、そんなくだらないイベントなんかやめちゃえ!」
……とそれこそ熱狂的なサッカーファンの前で口にすると射殺されかねないような事を考えてしまう訳だけど……
結構身近にもいたみたいワールドカップの被害者が。
ご近所さんの話なんだけどね、ダフ屋から買ったチケットなんかも含めて7試合見にいった強者がいてね、公務員なんで有給とったり半休とったりして仕事は辞めずにすんだそうだけど、交通費・宿泊費その他含めて100万円くらい使ったんだってさ、ワールドカップ観戦の為に。
テレビ番組でワールドカップ観戦の為に仕事辞めて日本に来たってイギリス人が紹介されてたりしたけど、それって独身の若い男の子だった。ところが今話題にしている彼は妻子持ち。
よく奥さんが許したなって思ったら、奥さん子供連れて実家に帰っちゃったんだって。
ワールドカップが終わった今、そこの夫婦がどうしているのかはまだ聞いてないんだけど。
このページのイラストはすべて霜月楓さんに頂きました
