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おかしなやつら5


Episode134   地図の読めない男
「まもなく右方向です」
 カーナビの合成音声が次の交差点が右折するべきポイントだと告げる。が、道路の案内標識を見たドライバーは
「えっ、うそ! ちがうやん」
 と叫んでハンドルを左にきった。
 初期型のカーナビゲーションには目的地までの道のりを自動検索する機能がなく、あらかじめ地図を見てポイントごとに右折、左折の支持を入力しておかなければいけなかった。つまり、さっきカーナビが反対方向の道を指示したのは彼が左右の入力を間違えていた為におこったのだ。
 結婚当初、旦那とドライブに行くとよくこういう事が起こった。前例のように運良く案内標識があったりして、結果的に道を間違わずにすめばいいけれど、カーナビの画面に表示される現在位置を見て「どうもおかしい」と云って引き返すこともしばしば。
 はっきり云って、風日の旦那は方向音痴だ。カーナビが発売された時
「オレの為に作られたような機械や」
 と云って、とびついたのだけれど、まともに地図が読めないんだから
「カーナビっていうのは道に迷わん為の機械やのうて、迷っても傷が浅くてすむようにする為のもんや」
 という状態だった。少なくとも現在位置は教えてくれる。
 何年かたって、ナビゲーションのソフトがヴァージョンアップし、目的地への経路を自動的に検索、進むべき道に色まで塗ってくれるようになったのは本当にありがたい事だった。



Episode137   地図の読めない男2
「カナダってどこ?……あ、右の方か」
 ある日の風日の旦那の科白。友達の友達が昔カナダに住んでて……なんて話をした時の事だけど、「カナダってどこ?」なんて訊くのも信じがたければ「右の方」っていう概念もすごい。
 つまり日本を中心に描かれたメルカトル図法の世界地図でカナダが右端の方に位置しているって事を云いたかったらしい。
 この会話をきっかけに旦那が方向音痴である理由の一端がのみこめた。旦那の頭の中には右とか左とか上だの下だのといった相対的な位置関係しかインプットされておらず、東西南北といった概念がない。だから自分が回れ右すると頭の中の地図も180度回転してしまい、東西南北が逆になってしまう。
 実際のランドマークとずれるんだから気付いてもよさそうなものだけど、普段周囲を注意して見ていないので、手遅れになるまで間違った方向に進んでいってしまい、しまいに自分がどこにいるのかわからなくなる、という訳だ。
 だから旦那に道を説明させると、たいていよくわからない事になる。前に旦那の説明だけで我が家に来ようとした人は途中で迷ってしまった。
 で、電話をかけてきたんだけど、旦那にはその時相手がどこの公衆電話から(我が家の近くではよほど電波状態がいい時でないと携帯が使えない)かけてきたかもわからなっくて、結局私がそこからの道のりを説明するハメになった。
 だいたい「3回以上曲がる道はデンジャラスゾーン」なんて云ってる人だからなァ。



Episode138   嫌な音
 あなたにとって嫌な音ってなんだろう?
 黒板やガラスを爪でひっかく音? 目覚まし時計のベル? 救急車や消防車などのサイレン?
 風日の旦那の場合は陶器や磁器が金属とこすれる音や金属同志(特にアルミなどの軽金属)がふれ合う音だったりする。つまり金属製のスプーンやフォークが皿をこすったり、鍋の底をおたまでこすったりする音に嫌悪感を感じるらしい。
 ステンレスのボウルで泡立て器を使う音なんかもダメ。そういう音を聞くと背筋がヒョエーッ! という感じになって足から力が抜けてしまうそうだ。
 なんでそんな音が? と思うけれど苦手なものは苦手なのだ。ガラスを爪で……等は平気なクセにさ。
 でも困るんだよねー。
 たとえばカレーを食べる時って、最後の方はスプーンでお皿をこするようにするよね? そういう音もダメで我が家では金属ではなく竹製のスプーンを使っている。スパゲッテイもおはしで食べる。おみそ汁をよそうのに金属のおたまを使うと「ヒエエーッ!」という声が聞こえてくるので、木のおたまを使ったり、鍋を傾けてお椀にいれ、鍋に残った具を菜箸で移したりする。
 ボウルもステンレスから耐熱ガラスのものに変えた。
 風日の旦那は決して厨房で働けない男なのだ。



Episode139    聞いたような話
 Tちゃんが沖縄に遊びに行った時、日焼けで痛いおもいをするのは嫌だと思って、強力な日焼けどめクリームを持っていった。
 顔や手足はもちろん、泳いでいる間に水着の肩ひもがずれても大丈夫なように一度肩ひもをはずして肩全体にまんべんなくクリームを塗るって事までやって、これで万全と安心していたのだけど……
 沖縄から帰ってきたTちゃんは日焼けで真っ赤になり、皮がむけて苦しんでいた。
 左右の耳だけ。
 そう、彼女は耳に日焼けどめを塗るのを忘れていたのだ。
 まわりのみんなから「耳なしほういち」と云われて大笑いされたのはお察しの通り。



Episode140   警察から電話?!
 ある日の朝、会社にでかけた旦那が引き返してきて、きてるはずだった絵コンテだか設定だかがきてなくて仕事ができないので、ちょっと遊びに行こうと云う。2、3時間つぶしている間に届くだろうから、と。
 で、旦那が運転する車に乗ってボーリング場に行った。2ゲームやって一旦二人で家に帰り、家の前に車をとめてお茶など飲む。
 さて、そろそろいいだろうと旦那は会社へ出かけて行った。
 当時我が家と会社との距離は徒歩15分くらい。駐車場は会社と家の中間くらいの所を借りていたので、駐車場に車をいれて、そのまま会社まで歩いていくつもりで。
 旦那を送り出し、掃除などしていた私の耳に電話のベルが聞こえてきた。受話器をとる。
「○○警察の者ですが……」
 という名乗りにまずびっくりした。警察? そんなところが我が家に何の用があるんだろう? そして更にドキッとする科白が続く。
「a宦孰x ○xxxxはお宅の車でしょうか?」
 !!!!
 それは確かに、つい1時間ほど前に旦那が駐車場に入れに行った車のNo.だった。ま、まさか事故にでもあって旦那が意識不明で免許証もどさくさで燃えたり見当たらなかったりして身元の確認がとれなくって……
 などと考えて一瞬、血の気がひきかけた。が、うちの車だという答えを聞いた警察官が連ねた言葉は……
「駐車違反でレッカー移動したので引き取りに来てくれ」
 というものだった。
 な、なんで? 駐車場に入れに行ったはずなのに?
 あとで旦那から事情を聞いたところによると……
 その頃借りていた駐車場は軽自動車とかせいぜいがスターレット・マーチクラスの小さい車が1台やっと入れられるような狭い場所(車のドアを半分くらいしか開けられなくて、身体を斜めにして乗り降りしなきゃいけないような所。両脇は人家)で、交通量の多い道路に面していた。
 旦那が車を入れようと思った時、ちょうど駐車場の前あたりがひどく混雑していて、車の流れを遮断して車庫入れするのがためらわれた。それでとりあえず会社近くの路上に駐車して、後から車を移動させるつもりだったというのだ。
 普通でもとても車庫入れしにくい場所なので、気持ちはわかるけど、出す時に苦労すればいいとあきらめて頭からつっこんでおくとか(それくらいの時間は後ろの車に待ってもらってもいいと思う)、家の前までとめに帰ってくるとかすればよかったのに。
 当時私はペーパードライバーだったとはいえ、家の前だったら窓から見ていて駐禁とられそうになったらちょっと動かすくらいの事はできただろうし。
 罰金、レッカー移動代、保管料(なんか1時間800円くらいの駐車料金をとられたはず)もろもろの出費は私が家計費から出すと云ったにも関わらず、おこづかいから出してたけどね。



Episode143   接続の儀式
 風日のうちは田舎に建っている。ADSLはおろかフレッツISDNだってエリア外だ。もちろん地元のケーブルテレビ局はプロバイダサービスをやっていない。大抵11時頃床に着くのでテレホーダイは使えないし。
 そんな訳でネットに繋ぐ時はできるだけ短い接続時間で済むようにとても気を遣っている。そのうえ食事をするテーブルでパソコンを使うのでネットに接続する前にはあれこれやらなければいけない事がたくさんある。
 ノートパソコンをテーブルに持ってくる。マウスやACアダプター、電話線をパソコンに繋ぐ、電源を入れて1分半程ハードディスクが唸るのを聞く、インターネットエクスプローラーを起動してオフライン作業をクリックする。回りたいサイトへすぐいけるように自分のサイトのリンクコーナーを開いておく。アウトルックエクスプレスを起動する等の準備を整えてのち、電話機からのびているコードを壁のモジュラーボックスから引っこ抜き、パソコンからのびているコードと入れ替える。
 で、アウトルックの送受信なり他の何かをクリックして画面に表示される「接続」の文字をクリックする。
 さて、長々と前置きをしてきたけれど、タイトルの「接続の儀式」とはここまでの作業をいうのではない。
 うちの旦那の奇妙な習慣の事だ。
 風日の旦那はダイアルアップ画面の「接続」をクリックした瞬間、トイレにダッシュする。
 そりゃ画面に「ダイヤル試行 ダイヤルしています」の表示が出てからちょっと間があって実際にパソコンからジーコロジーコロいうアナログなダイヤル音が響いて(風日んちはダイヤル回線なの)、ダイヤルし終わってから本当に回線が繋がるまで少しかかって、プロバイダに認証してもらう時間がかかって、それからメールチェック始めて……
 なんだかんだでメール受信が始まるまでに20秒くらいかかるとはいえ、トイレくらいオフラインの時にゆっくりいけばいいじゃないと思うんだけど。
 まあ、うちには廊下というものがなくて居間兼食堂に使ってる部屋から直接トイレにいけるからできるワザともいえる。居間のドア開けて、廊下に出て、洗面所のドア開けて、トイレのドア開けて……用を足して手を洗って、開けてきたドアをみんな閉めて……
なんて事をやらなければいけないなら、旦那もそんなタイムトライアルみたいなトイレの行き方はしないだろうから。



Episode144   夫婦の会話?
夕食後、そろそろお風呂にはいって寝ようかという時間。
その日買ってきた「タイピング拡散波動砲」で遊んでいる旦那にむかって
風日:キリのいいとこでやめときね
旦那:はーい



Episode149   ♪さらば〜……?!
 先日、旦那がヤマトパーティなるものに行った。
 宇宙戦艦ヤマトのオンリーイベントなんだけど、その開場で「今年あったヤマトイベントの紹介」のビデオ上映があったそうだ。ヤマト関係のテレビ番組の録画とか、ホームビデオで撮影された他の似たような催しの様子とか。
 その中にホームビデオで撮った結婚式の映像が……。
 なんだと思ってみていると、やおらヤマトのテーマ曲が流れだし新郎新婦が入場。 旦那に
「まさか歌ははいってなかったんでしょ?」と訊くと
「よく覚えていない」という返事。
 でも、いくらなんでも歌詞ははいってなかったと思うんだけどね、やっぱマズイでしょ、結婚式が「さらば〜……」で始まっちゃ。
 まあ私なんかは、たとえインストルメンタルだったとしてもあの曲を聴くと頭の中に歌詞が鳴り響いちゃうんで、どっちにしても同じかもしれないけど。
 そしてビデオに映っていたヤマトパーティーの主催者さんが司会を始める。
「私これでヤマトのテーマで新郎新婦が入場する結婚式の司会を3回務めさせていただきました」
 ヒェエ〜っ!
 本人達はいいかもしれないけど、きっとご両親達は嫌だったに違いないと思うのは私だけじゃないよね。



Episode150   地球熱?
 あれは確か硝が高校生の時。
 彼女は風邪をひいて内科医院に行った。子供の頃から世話になっている医院で、病気がちの彼女には慣れ親しんだ場所だ。
 その日は院長の息子(若くて冗談好きである)が彼女を診察した。
「どうですか?」
 と訊いた硝に若先生はうーん、と唸ってからこう云った。
「これは地球熱だね」
「地球熱?」
 はて、そんな病気があったかな? とポカンとした硝に若先生は説明する。
「地球熱というのはだね。地球以外の星から来た生物が、地球の環境になじめずに体調を崩す病気で……」

 その話を聞いた風日は爆笑した。
 そうか、やっぱり硝は地球外生命体だったのか、と。常々あやしいと思ってはいたんだよね。医者に云われたんだから間違いないや。



Episode158   きいちゃんの悩み
 きいちゃんはトレーディングカードコレクターだ。 と、いうか本やCD、LD、ゲームソフトなど物をためこむのが好きな風日の友人に多いタイプ。 トレカはそんな彼女の数多い収集品のひとつなのだけれど……
 家に物があふれて困っているなどどいう話をしていて風日が冗談で
「もうトランクルームでも借りるしかないね」と云うと
「いや、最近ホンマに借りよかなと思いはじめた」という答。
「ええっ! だってお金かかるやん。それも半永久的に」
「だってねー!……」
 彼女の旦那は煙草を吸う。煙草の煙というやつは実にクセモノで引き出しの中の物であろうと箱の中の物であろうと薫製にし、茶色いヤニでニチョニチョにしてしまう。
「私の大事なトレカがそんな目にあうなんて耐えられないわー!」
 という事らしい。これはもう家から避難させるしかない、と。
「空気清浄機買えば?」
「それくらいじゃ、煙草の煙をふせぎきれへん」
「食品用の真空パック機を買って真空パックにしてしまう」
「どんだけせなアカンのよー。それに端の方とか折れてカードが傷むかも?」
「じゃ、布団圧縮袋にでも入れれば? 座布団用のとかあるやん。ストックブックごと入れてしまえば傷めへんし。再利用できるタイプのやったら見たい時に開けてまた仕舞えばいいし」 「それ、いいかも!」
 え? 本気か?  その後、彼女が可愛いカード達をどうしたのか、私はまだ聞いていない。 が、かみつくに云わせるとストックブックごと真空パックもカードが傷む可能性があるそうだ。 さあ、どうするきいちゃん?



Episode163   福の神のおごり?
 エルちゃんはおごられ上手。学生時代、誰かといっしょに飲んだり食べたりすると大抵おごってもらっていたように思う。
 学校帰り、I君、エルちゃん、ひるちゃん、風日の4人でラーメンを食べた時、メンバー唯一人の男性I君が気を遣って「おごる」と云ってくれた。
 が、I君とて貧乏学生である事に変わりはない。風日とひるちゃんは丁重に辞退したのだけれど、エルちゃん一人ちゃっかりおごってもらっていた。
 だが、エルちゃんはただあつかましいだけのおごられ上手ではない。彼女には福の神がついている。
なぜ、そう思うのかというとこういう事があったからだ。
 その日、風日はエルちゃんを含めた数人といっしょに喫茶店に行こうとしていた。
 いっしょに飲み食いしても会計の時エルちゃんが財布をだそうともしない為、不本意ながらもおごる事になってしまったという経験があるメンバーは口々に
「きょうは絶対おごらへんからな」
と念を押しながら歩いていた。
 と、まさに目的の喫茶店のドアの真ん前でエルちゃんが屈み込んだ。
 そして立ち上がったエルちゃんの手に銀色に輝く500円玉が!
 なんとエルちゃんはまるで神様がコーヒー代をおごってくれたかのように500円を拾ったのだった。




このページのイラストはHACTIONの霜月楓さんから頂きました

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